【悲報】国家戦略特区で突然ドッジボールがはじまってしまう

何のことかわからんと思いますが、ざっくり言うと以下のような塩梅。



安倍総理「国家戦略特区に関してはワーキングが決めてる」


原英史氏(国家戦略特区ワーキンググループ座長代理)「ワーキングは審査とかしてない」


安倍総理「メンゴメンゴ。ワーキングが決めてんのは規制改革の項目で事業者決めてんのは分科会。ちょっと説明が雑だったわ。まあどっちにしろ民間有識者が主導しとんねんけど」


八田達夫氏(国家戦略特区ワーキンググループ座長)「分科会では俺らはオブザーバー」



なんやこれ。
ドッジボールかなんかか。


まあ、それぞれをもう少し詳しく見ていくとだ、まず安倍さんはこんな風に以前の予算委員会で答弁したわけですよ(強調下線は筆者)。

安倍内閣総理大臣 プロセスに一点の曇りもないというのは、私が申し上げたわけではなくて、先般の参考人質疑において、今回の規制改革プロセスを主導して、一点の曇りもない、八田座長がそのように、主導してこられた八田座長がそのように答弁をされているわけでございます。

 また同時に、八田座長からは、柳瀬元秘書官から何の働きかけも受けたことはないという発言があったと承知をしておりますし、また、面会の半年以上前の時点で既に民間議員ペーパーで獣医学部新設が重要と明記しており、面会が民間有識者の議論に影響を与えたことは一切ない旨の発言があったと承知をしております。

 この国家戦略特区のプロセスあるいは決定過程については、江田委員も御承知のとおりだろうと思いますが、まさに民間議員が主導している、主導していくからこそいわば岩盤規制に穴があくという考え方でこの国家戦略特区がつくられたのでありますから、その民間議員の方々に対しては一切の働きかけがなかったということは明らかになっているわけでございますし、前川前次官も含めて、私から指示あるいは依頼をされた人は誰一人いないということは、もう既に明らかになっているとおりでございます。


安倍内閣総理大臣 ワーキンググループは全員民間議員であります。(江田(憲)委員「いや、本部」と呼ぶ)いや、ちょっと済みません、最後まで話を聞いてください。

 民間議員がまさにワーキンググループを形成していて、そこでいわば主導して進めていくという意味で申し上げているわけでございます。その主導の中で、いわば選定等も事実上行われているわけでございます。

同上

安倍内閣総理大臣 ずっと、しばらく官邸におられたから御存じでしょうけれども、私が座長をしているのは事実であります。しかし、実際の仕事は有識者議員が、私が議長を務めているのは事実でありますが、実際、有識者議員の皆さんが、ワーキンググループが物事を決めていって、前さばきといって、前さばきというのは資料を決めるということではなくて、事実上、実質をほとんど決めることであって、その方向に従って私の発言要領というのは、事実、上がってくるわけでありまして、事実、ここで決まったことを私が覆したことは一度もありませんよ。
 それで、事実上、ワーキンググループで決まったこと、私も忙しいですから、この国家戦略特区諮問会議のまさに前日あるいは当日に、どういう形で会議を進めていって、どういうことが決定されるかということが私に秘書官から伝えられるわけでございまして、そこはまさに、事実上、もう中身が決まったことを決定する場でしかないわけであります。
 確かにこれは、そこで決定して、私が座長をやるからこそ国家戦略特区というのは大きな力を持ち、いわば私がそこで発言したことを突破力としていくわけでありまして、民間議員の皆さんにとっては、その発言のもとにまさにドリルで穴をあけていくという作業をされるわけでありまして、それがまさに彼らの方向性に総理大臣としてのバックアップをしていくという形になっていくということでありますが、実際に働いているのは、私が一々そこで事業者を見て選定するということは全くないわけでありまして、まさに、上がってきたものを私が最終的にその会議で決定をするという仕組みになっているわけでございます。
 これだけではなくて、さまざまな会議においてはこういうことはあるわけでございます。しかし、もちろん私が議長でありますから、最終的な責任は私にあるということになるわけでありますし、決まった案件というのは、私が決めた案件ということになるのであります。


同上


要するに、事実上ワーキングが決めて、それが自分のとこに上がって来ると。
さらに言えば、この次の日に内閣府が、ワーキングが決めてるって総理言ってたけどそうなんかと聞かれてそれを認めるような答弁をしてるわけです。

○田村智子君 今日、もう一点、ワーキンググループの闇、国家戦略特区の、これについて質問したいんですね。
 昨日、衆議院予算委員会江田憲司議員の質問に対して安倍総理は、ワーキンググループの主導の中で選定等も事実上行われていると答弁したんです。これは区域の指定の選定や規制改革事項の選定をワーキンググループの議論で行っているというふうに聞こえるんですけれども、本当にそうなんでしょうか。
 例えば、特区区域指定は、区域方針の決定、つまり提案された計画の採用と一体で行われるんですけれども、自治体からたくさん出された提案の中からなぜ広島県今治市が選定されたのか、その議論をしているワーキンググループは公表されているものを見る限り見当たらないんです。これ、どこのワーキングでやったんですか。



○政府参考人(河村正人君) お尋ねの広島県今治市を特区とする、選定することについての経緯でございますけれども、平成二十七年の春から秋にかけまして四十三の自治体から提出された特区提案につきまして、ワーキンググループにおいて順次ヒアリングを実施をいたしました。その後、民間有識者の御意向を踏まえまして、指定候補となり得る自治体について、最終的に、十二月十日にヒアリングを行った上で十二月十五日の特区諮問会議で了承されたところでございます。
 その経過の中で、四十三の自治体からのヒアリングを終えた後、民間有識者の方々から指定基準に照らしてふさわしい提案はどれか聞き取ったところ、民間有識者の御意見は、千葉市北九州市広島県、それから今治市の四自治体でほぼ一致しておりまして、他の自治体を挙げる声は一部にとどまると、そういう経過を踏まえまして事務局で原案を作成をしたということでございます。



で、恐らく、こういう話もあったから、毎日新聞は、ワーキングの委員が提案者にアドバイスしたり、ご飯食べさしてもらったりすんのはよくねえんじゃねえかって記事を出したんじゃねえかと思うんですよ。





そしたら、今度は、原さんは、ワーキングは審査とかしないって反論したんですよ。

第2に、毎日新聞は、「提案を審査・選定する民間委員」が「提案する側の法人を直接指導」したことが問題だ、と言っている。これは根本的な間違いだ。

 規制改革のプロセスで、特区WGや規制改革会議は、規制改革の提案を受けることがある。これは、「審査・選定」を行っているのではない。

 おそらく毎日新聞の記者は、規制改革プロセスと、補助金申請や許認可などのプロセスの区別がついていないのだと思う。

 補助金申請などのプロセスの場合、受け手と申請者は、「試験官と受験生」の関係だ。受け手は、申請を受けて厳正に審査し、どれを採択するかを選ばなければならない。だから、両者は遮断されなければならず、受け手が特定の申請者に助言するようなことはあってはならない。

 一方、規制改革のプロセスで提案を受けるのは、現行規制の問題や背景事情を理解し、改善のアイディアを広く求める目的だ。規制改革プロセスの本丸はその先にある規制所管省庁との折衝で、提案のヒアリングは折衝の準備のために行う。そして、規制所管省庁との折衝を経て、規制改革が実現すれば、提案者だけではなく、社会全体がその利益を受ける。提案者に限らず、ほかの事業者も新たなルールの適用を受ける。

 こうした目的だから、提案者に委員が助言するのは、不適切でも何でもない。むしろ本来の務めだ。委員と提案者は、規制という壁に向かって同じ方向を向いて取り組む「パートナー」の関係だから、規制所管省庁との議論に備えてより良い提案にブラッシュアップしていくのは当然だ。ヒアリングの会議の中で助言を行うこともあるし、事前に求められれば助言する。




こうなってくると、総理と言ってること全然違うじゃねーかって話になってそれをこないだの予算委員会で今井さんが追及したところ、メンゴメンゴっていう答弁が出たわけです。




議事録まだなんで僕がざっくり起こしたのを載せておきます(さっきと同じく強調下線は筆者)。

私が今井議員も含めて繰り返し答弁させていただいてきたのは、国家戦略特区のプロセスにおいては、規制改革項目の追加、事業者の選定、いずれについても、民間有識者が入った特区諮問会議やワーキンググループが主導し、適正に行われてきたというものでありました。
その趣旨は、いずれのプロセスも民間有識者が主導しているということ
を申し上げようとしたわけでございまして、この、そのときの私と江田さんのやりとりはですね、まさに、安倍さん、それはあなたが決めてるんじゃないかという言い方だったんで、そうではございませんよと。民間人が入ったプロセスにおいて決めていますよということでございました。で、民間人が入ったプロセスとしては、この特区ワーキンググループと、あとですね、事業者の公募については分科会にて検討するわけでございますが、正確を期して、もし答弁していればですね、ワーキンググループあるいは分科会あるいは諮問会議との具体的な役割分担について厳密に答弁したかったのでございますが、厳密な正確性を欠いた表現となり、誤解を生じかねないものとなった点については、率直にお詫びを申し上げたいと思います。
政府の考え方としてはただいま北村大臣が答弁したところでございまして、あのときは、政治家、いわば私が決めてるんではないかということだったので、そうではないということをご説明する中においてですね、厳密にこのワーキンググループと事業者の公募の後の分科会の検討、あるいはまた諮問会議と、厳密にわけてですね、役割分担を正確に答弁したものではなかったことで、誤解を生じたということでございましてこれは率直にお詫びを申し上げたい。繰り返しになりますが、正確には北村大臣が答弁した通りでございます。



特例措置の創設等々についてはまさにワーキンググループで決めます。これは非常に重要なことでありますから、ここで議論をしています。しかし、最終的に勿論決まるのは、形式的には諮問会議で決まっていくということなんだろうと思うわけでございますが、そういう趣旨の答弁をしていたということでございまして、そこで先程も申し上げましたように、関係している私の答弁を、正確性を期せば、分科会において検討して決めていくということであったと。こういうことでございます。


同上



いまいちわかりにくいけど、要するに、事業者は分科会で決めてるんやって言うてるんだと思うんですよ。


けどもだ。
分科会と一口に言っても色々な分科会があるわけですが、例えば、加計の件に関する今治分科会の議事要旨に書いてあるメンバーを見てみると、民間有識者って中にワーキンググループ座長代理であるところの原さんが入ってんですよ。

https://www.kantei.go.jp/jp/singi/tiiki/kokusentoc/hiroshimaken_imabarishi/imabari/dai2_gijiyoushi.pdf


他の、議事要旨見ても、原さんがいたり八田さんがいたり、両方いたりするんですよ。
https://www.kantei.go.jp/jp/singi/tiiki/kokusentoc/tokyoken/tokyo_sandbox/dai1/gijiyoushi.pdf
https://www.kantei.go.jp/jp/singi/tiiki/kokusentoc/tokyoken/naritashi/dai5/gijiyoushi.pdf
https://www.kantei.go.jp/jp/singi/tiiki/kokusentoc/tokyoken/tokyotoshisaisei/dai8/gijiyoushi.pdf

あるいは、ワーキングのメンバーと見比べたりすると、他のワーキングのメンバーも入ってたりする。
https://www.kantei.go.jp/jp/singi/tiiki/kokusentoc_wg/pdf/meibo.pdf



だから、ワーキングでは事業者は決めない、分科会で決めるっていったところで、原さんとかのワーキングのメンバーおるやんけという。そうすると結局、事業者決めてる人が事業者にアドバイスしてんじゃねえのかってことになってくんですよ。


そこのところをこないだの予算委員会で森ゆう子さんがちょこっと触れたら、今度は、八田さんが、分科会の有識者はオブザーバーだって言い出したんですよ。

WG 委員などの民間有識者らが仮に出席しても、あくまでオブザーバーとしての参加であり、何ら決定権を持つものではありません。




いやもうなんやねん。



大体さあ、上の今治分科会の議事要旨見たらわかるかと思いますけども、民間有識者(八田さんいわくオブザーバー)の下に、オブザーバーとして、文科省の人と、農水省の人と、愛媛県の人書いてますやん。
同じオブザーバーだったらここ分けて書く意味あんのっていう。
いやまあ、そこは細かいところだからどうでもいいですけども、出席者を順々に見て行ったらどうしても意味不明だと思うんですよ、これ。

出席
<国>
佐々木 基 内閣府地方創生推進事務局長
自治体>
菅 良二 今治市
<民間事業者>
加戸 守行 今治商工会議所特別顧問
<民間有識者
阿曽沼 元博 医療法人社団滉志会瀬田クリニックグループ代表
原 英史 株式会社政策工房代表取締役社長
八代 尚宏 昭和女子大学グローバルビジネス学部特命教授
植田 富貴子 日本獣医生命科学大学獣医学部教授
猪熊 壽 帯広畜産大学畜産学部教授
<オブザーバー>
常盤 豊 文部科学省高等教育局長
今城 健晴 農林水産省消費・安全局長
山下 一行 愛媛県地域振興局長
<構成員候補>
柳澤 康信 学校法人加計学園岡山理科大学
吉川 泰弘 学校法人加計学園新学部設置準備室長
渡邉 良人 学校法人加計学園常務理事・法人本部事務局長
<事務局>
藤原 豊 内閣府地方創生推進事務局審議官


最初の佐々木さんっていう国の人は、内閣府地方創生推進事務局長なんだから、事務方の人だと思うんですよ。で、最後に書いてる藤原さんって人も同じく事務局の人ですし、要旨読んだら司会進行してるわけですから事務方の人でしょう。



で、次に市長と、商工会議所の加戸さんが居て、オブザーバー群の次に、加計学園の人たちがいますよね。
加戸さんと加計学園の人たちは勿論のこと、市長というか市も言うなれば、事業者側ですよ。
なにせ市長はこの中で、

平成30年4月の開設に向けて全力を尽くす所存でございますので、どうぞよろしくお願いいたします。


同上

とまで言ってますし、以前のワーキングに『今治市独自の判断』で学園関係者を同席させるぐらいですからね(加計幹部同席の不記載「通常の扱い」 WG座長が見解:朝日新聞デジタル hatena bookmark)。



でもって、民間有識者がオブザーバーだとしたら、残りは全部オブザーバーってことになります。
そうするとこの分科会、事務方と事業者側とオブザーバーしかいねえんですがそれは。


総理は、いずれのプロセスも有識者が主導する、分科会で検討する、って言ってんですよ。でも、オブザーバーは意見は言えるかもしんないけど、主導だの検討だのはしねえもんでしょ?
そうなってくると誰が主導して検討してるんでしょうか。事業者は検討する側じゃなくてされる側だから勿論違いますよね。残り事務方だけですよ。


もっと言うと、最後の方に司会進行してる藤原さんが『よろしゅうございますでしょうか』って聞いたのに対して『(「異議なし」と声あり)』ってくだりがあんですけども、一体誰に聞いて誰が答えたんだよと。
内閣府の藤原さんが聞いて、内閣府の佐々木さんが答えてんの? まさかそんな。


だから結局話がまた宙に浮いたような形になってて、なんやこれドッジボールかなんかかって思わず突っ込んだわけですよ。
一体全体、最終的にこのボールどこに収まるんでしょうか。