新世紀ユニオンの不可解


既にブコメもしたけど他にも気になるところがあるので書いておく。

脅迫・圧力に屈し違法解雇を行った人間文化研究機構・日文研! - 委員長の日記

『オープンレターの運動とリンクしていた脅迫状や電話による解雇要求』『大学幹部で構成する機構理事たち自身が、社会的注目を集めているG先生に妬みを持ち、パワハラを行った』この辺名誉毀損になりうるのでは

2022/03/31 17:20



・ 事実に対する認識について

この違法解雇の発端は歴史学者のG先生のカギ付きアカウントの(ツイッターでの)「つぶやき」で、相手の名前を出さずに皮肉っていたことでした。これを実名で公表したのは「被害者」側でした。自分で差別発言だと実名を出し、社会化した場合、普通慰謝料は請求できません。


まずこの中の『相手の名前を出さずに皮肉っていた』部分なんですけども、そうでしたっけっていう。







いや、どう見ても名前出してると思うんですけどどうなってるんでしょうか。


名誉毀損について


次に、名前出さずに言及してた場合、言及された人が自ら名乗り出たら名誉毀損にならないとか書いてるんですけど、こんな理屈はちょっと聞いたことがありません。


というか普通に考えれば分かるかと思いますが、例え、はっきり名前を書いていなくても、前後の文脈やその他の記述からその人が誰であるかが他の人に特定できるならその人の社会的評価は低下するでしょうよ。


関連書をめくってみても、

匿名であっても、名誉毀損性が認容された事例は枚挙にいとまがないので多くは挙げないが、たとえば千葉地判1996(平成8)年9月25日は、テレビの政見放送においてある候補者が「『共産党所属の市会議員』がスキー場建設会社から金員を受け取った」と摘示して名誉毀損をしたケースにつき、原告が当該スキー場の建設問題に対する住民運動で中心的な働きをしていたところから、「本件発言にいう『共産党所属の市会議員』が原告を指すと受け取る者は、…地域・関心により限定された範囲の者であったといえるけれども、…不特定多数の者というに足りるものといえる」として、当該特定人である原告に対する名誉毀損性を認めている。


佃克彦著「名誉毀損の法律実務」P103


とあって、まあそりゃそうだわなとしか。


つうかもしそれが普通だったら誹謗中傷やりたい放題でしょうが。
通常、裁判は公開だから訴訟を提起した時点で名乗り出たのと同じことになるわけで、そうすると多少名前を伏せて言及されただけで、その人が「誰がどう見てもこれ俺のことじゃねえか」って訴えた時点で名誉毀損にならなくなっちゃうもの。


まあもし前後の文脈やその他の記述からしても特定ができないくらいに匿名性が高ければ、その人と結びつかないからってことで社会的評価を低下させるものではないってことになるかもしれないなとは思いますよ。


しかしそれはそうであるならばというだけの話であって、自ら名乗り出たら普通ならないとかいう話にはならんでしょ。


・整合性について


ここはあまり確かな話ではないのでそのつもりで読んで欲しいんですけども、要するにこの人は呉座さんの北村さんに対する発言は名誉毀損にならんとかそういうことを主張してるわけですよね。


あの何ていうか、その主張って、当事者である呉座さんと北村さんの和解の内容と整合性取れてるんでしょうかね。
いやまあ和解の内容が公開されてるわけではないから、最初に断った通り、はっきりとしたことは何も言えないんですけど。


仮に、和解の中で、呉座さんの発言は道義的にはアカンけど違法とまでは言えないみたいな扱いになってるなら、まだいいかなあとは思うんですけれど、法的に見てもアカンというような内容が含まれてたらちょっと整合性取れないのではと思うんですよ。


で、これが全くの第三者が意見言ってるだけならいいんですけど、この人は呉座さん側に立って、日文研とかとやりとりしてるわけでしょう。
呉座さんサイドに立ってる人間が和解の内容と齟齬のあるようなことを言ってたらそれはちょっとあんまりよろしくないのではという気がするんですが、俺だけでしょうか。


・処分について


次に、この人前からそもそもの北村さんに対する発言とか、オープンレターとか、脅迫とかが処分の原因なんだって言ってんですけど、それ以外のこと全然言わないっすよね。


だけど、呉座さんが処分されたのって、北村さんに対する発言やあるいは、オープンレターだけが原因でないってことは既にわかってるわけじゃないですか。


まあ詳しくは森新之介さんという方のnoteを読むといいと思いますが。というか、この件に関心ある人は全員、全ての投稿を読んだ方がいいと思いますが。


note.com
note.com



あるいは、人間文化研究機構のプレスリリースとか。
www.nihu.jp

【処分の理由】
 当該研究教育職員は、SNS(ソーシャルネットワーキングサービス)において不適切な発言を繰り返し行った。
 また、勤務時間中に私的な利用目的で複数回にわたってSNSに投稿した。
 これらのことは、人間文化研究機構職員就業規則第23条及び第26条第2号に違反し、同規則第36条第1項各号に該当することから、懲戒処分を行ったものである。


(強調下線は筆者)


もうこの時点で、発言の内容だけで処分されたわけじゃなくて仕事中にやってたからっていうことでも処分されたってわかるわけじゃないですか。


無論のこと、それぞれがどの程度処分に影響したのかっていう割合はわかんないですよ。どういう風に何を判断したのかっていう詳細が公開されているわけではないですから。
5:5かもしれないし、6:4かもしれないし、7:3かもしれないし、8:2かもしれないし、9:1なのかもしれない。でも並べて書いてるわけですから、どっちかがゼロってことはないでしょう。


念のため触れておきますが、ちょっとぐらいええやんと思う方もいるとは思いますし、僕もそううるさく言わんでもとは思いますけれど、今呉座さんのアカウントってもうないじゃないですか。
だからどんぐらいやってたのかって第三者の我々には判断の材料があんまないわけですよ。
もしアカウントが残ってれば、書き込みのタイムスタンプから、どの程度勤務時間内にやってたか類推することもできたかもしれないですけど。


ただ魚拓みるとtweet数が86.4kとかになってるので(リツイートも含んでるとは思いますが)かなりのヘビーユーザーであったことは確かでしょう(https://archive.ph/PnOZk)。でもそれもそのうちどのくらいが勤務時間内だったのかわからない以上大して意味ないですし。


更に、発言そのものについても、問題にされたのは恐らく北村さんに対してのものだけではない。


何故なら、この森新之介さんていう方が、呉座さんが言及していた中の一人だから。
さらに、

4月下旬の第1次接触からしばらく(かなり!?)経ったある日、日文研の同じ某職員からメールが届いた。
現在呉座についての調査結果報告書を作成しているところであり、その報告書にあなたのことを記載したいので承諾してほしい、というものだった。


という話があり、それを信じるなら(別に疑う理由もないが)、調査報告にこの人のことが載ってる可能性が高いから。



付け加えると、北村さんも問題にされたのは自分に対する発言だけではないという話を以前してたよね。



でまあ、ここでようやく新世紀ユニオンに戻ってくるんだけど、新世紀ユニオンってここら辺のこと一切言わないよね。


まだほかの人に触れないのはプライバシーに対する配慮みたいなことで理解もできるけど、勤務中にやってたってのに触れない理由がちょっとよくわかんないんですよ。

もしかしたら勤務中にやってたってのがほんとに大してやってなくて処分にもほとんど影響してないのかもしれないけれど、それならそれで「全然大したことないにもかかわらず処分理由に書いてんのおかしい」とかなんとか言ってもよさそうな気もすんですよ。


なのに、そのことに関して全然触れなくて、オープンレターの話はしまくると。
いや別にオープンレターの話がしたければすればいいとは思いますが、公開されてる処分理由にはっきり書かれてることに反論せずにそれをするのは順序が逆なんじゃなかろうかという話で。


決して褒められた行為ではないとはいえ、だからといって、直ちに処分が妥当だってことにはならんわけで、そこもひっくるめて堂々と主張すればよくねと思うんですけどね。


まあこのユニオンにはこのユニオンの判断があるんでしょうから、俺が口出すようなことでもないんでしょうが。



ただ、冒頭で触れたそもそもの事実認定がおかしいというところや、この辺のことから、わけがわからんと思わざるを得んのですよ。
その上、ブコメで触れたように、こっちが名誉毀損なんじゃねえかってことまで書いちゃうし。


本当に大丈夫なんでしょうかね。いろいろと。


・最後に

蛇足かもしれませんが、俺は別にオープンレターそのものに対してどうのこうの言う気はないです。


ただ繰り返しにはなりますが、我々には処分の詳細はわからんわけですよ。加えて、呉座さんのアカウントが削除されてる以上、個々の発言を自分の目で見て判断することも(魚拓がいくつか残ってるとはいえ)、かなり難しい。


北村さんや森さんに対するものを含めた発言が問題視されたと思われる+勤務時間中にtwitterしてたことも加味されている、で、調査報告の中でオープンレターに触れてはいるらしい。ぐらいのことはどうにかわかるけれど、それぞれがどのように、あるいはどの程度処分に影響してるのかは藪の中なわけで。


この状況下でオープンレターの影響をやたらに強調するのは、早計とか軽率とか言うんじゃないでしょうか。

とまあそれは思ってます。


また、呉座さんの処分が妥当かどうかについても、同様の理由で、少なくとも現時点ではあまりどうのこうの言うべきではないのではないかと考えています。


つうか、すでに訴訟になってるわけでその中でいろいろと明らかになっていくのを待って、それから、なんか言いたい人は言いたいことを言えばいいのではないでしょうか。


いろいろ気を揉んでしまうというか、先走ってしまうっていうのもわからなくはないんですけど、やはりそういうものは少し抑えた方がいいのではないかという、今日はそれだけのお話。