隆慶一郎「死ぬことと見つけたり」
なんか、前ちょっと、「死ぬことと見つけたり」が話題になってたみたいなんで、今更ながら触れてみるお。
- 作者: 隆慶一郎
- 出版社/メーカー: 新潮社
- 発売日: 1994/08/30
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ちょっと違うと思う - finalventの日記
んで、まあ、僕の見方としては大体最終弁当の人の方に近いかなあ、とは思うんですけど、最終弁当の人は、
この本の本質は、生きることとか武士道とかいうことじゃなくて、人間が闊達に生きている様の面白さ・豪快さにあると思うのですよ。
http://d.hatena.ne.jp/finalvent/20080901/1220232273
ってな感じで、スゴ本の人の見方に対して、「本当に大事なのは、そこじゃないよね」みてーな言い方をしてんですよね。
だけども、僕が言いたいのは、そもそもスゴ本の人は、ひでー誤読をしとるんじゃないかっていうことなんですよ。
スゴ本の人は、
キッチリと自分の死を想像すると、後の人生まるもうけという気分になる。
http://dain.cocolog-nifty.com/myblog/2008/08/post_b7ea.html
って書いてんだけど、俺としては、
/ ̄ ̄\ / _ノ \ | ( ●)(●) . | (__人__) | ` ⌒´ノ そんな気分になるわけないだろ、常識的に考えて… . | } . ヽ } ヽ ノ \ / く \ \ | \ \ \ | |ヽ、二⌒)、 \
って思わず言いたくなるくらいなんですよね。
スゴ本の人も引用してるように、主人公の杢之助は毎朝、
出来得る限りこと細かに己の死の様々な部分を思念し、実感する。つまり、入念に死んで置くのである。
隆慶一郎「死ぬことと見つけたり」(上)P19より
てなことをやっていて、
寝床を離れる時、杢之助は既に死人
同上
になってるわけですよ。
でね、なんつーか。
死人が「人生まるもうけ」とか思うわけねえだろ。っていう。
ここら辺のことがよく分かるのが、次の部分。
佐賀鍋島武士のこころざしたものは、『犬死気違ひ』になることだった。杢之助と萬右衛門の二人には、明らかにそれがある。ことの大小を問わず、理由の正逆を問わず、一瞬に己のすべてを賭けて悔いることがない。正に勁烈としかいいようのない生きざまである。だからこそこの二人は、今、突然切腹する必要がなくなっても、眉毛一本動かさない。そんなものか、と思うだけなのだ。生命を捨てることが別段どうと云うことでもない以上、不思議に生命を拾うこともまた、別段どうと云うことではあるまい。
隆慶一郎「死ぬことと見つけたり」(上)P137より
本当の死人にとっては、「まるもうけ」なんて言葉はないわけですよ。実際。
何でこんな違いが出るかって言うと、スゴ本の人は、「死んだ後で生き返ってる」んだと思うんですよね。
要するに、死を想像する→俺死んだ!→でも生きてる!やった!まるもうけ!ってえ感じなんじゃないかと。*1
だから、スゴ本の人の考えって、九死に一生を得た人が、「もう俺は死んだ身だから」とか言って、思い切って第二の人生を送るとかそういう話に近いような気がします。
別にそれはそれで良いんですけど、それと「死ぬことと見つけたり」の話とは、似て非なるものでしかないと思うので。
まーこういうこと書くのにどれほどの意味があんのかっつう話もあんですけど、ほら、「どんどん余計なことをしていった方が、面白いし楽しい」とか書いた以上、それを余計なこととしてやめておくのは、なんか違うなーと思いまして。
ちなみに、前々から言おうと思ってたけど、「死ぬことと見つけたり」の中では、牛島萬右衛門が好き。
特に、
求馬は浪人たちの差す盃を片っぱしから引きうけて、忽ち二升あまりを飲み干すと、ふらりと立った。ちらりと杢之助に目をやると黙って出てゆく。一拍おいて杢之助が立った。萬右衛門も素早く立つ。揃ってさりげなく表へ出た。杢之助はそのまま歩き出した。萬右衛門はついてゆく。この世の果てまででもついてゆくつもりである。
隆慶一郎「死ぬことと見つけたり」(上)P91より
この、「この世の果てまででもついてゆくつもりである」が実に良いと思う。
まあ、他にも、「死ぬことと見つけたり」については、
死ぬことと見つけたり。 - 一切余計
とか
我輩はスタンドである。名前はまだ無い。 - 一切余計
とか
黄金の精神 - 一切余計
とか
我輩はスタンドである。名前はまだ無い。 - 一切余計
とか
物語とはキャラ狂いと見つけたり――物語にストーリーは必要か? 〜らき☆すたから考える〜完結編 - 一切余計
とか、散々言及して来たので、とりあえず、今日はこの辺で。
*1:憶測ですけどね