「事変 リットン報告書を奪取セヨ」を読んだ

まずびっくりした。
池宮彰一郎死んだの!?

全然知らんかったわ。
肺癌らしい。

結構好きな作家だったんだけどなー。


内容はタイトルから想像つきますね。
満州事変の発端になった柳条湖事件を調査するリットン調査団の報告書を奪うっていう話です。
正確に言うと、奪うって言うより盗み見て、日本の外交方針を決める……みたいな話なんですけど。

ていうか、関東軍って何で関東なんだろうってずっと思ってたけど、日本の関東とは何の関係もないのね。
関東っていうのは万里の長城っていう関所の東っていう意味だったのか。

ちなみに主人公は松岡洋右。あの国際連盟から脱退したときの全権だった人です。
つうか、それでその脱退する前に国際連盟で十字架演説とかいうのをしたらしいっす。
松岡洋右、国際連盟総会で「十字架演説」 / クリック 20世紀
小説でもこのシーンがあるんですが、僕は読んで大分感動しました。国際舞台でこれだけのことが言える人間は今の日本でも、なかなか居ないでしょう。
まあ満州事変という当時の議題の正当性はさておいて、ですけどね。

松岡洋右ってあんまりイメージ良くなかったんですよね。やっぱり、連盟脱退と結びついてるから。
でも、この小説を読んで、わりと変わりました。(この辺影響されやすすぎるとも言う(笑))*1
というか、満州事変(これを擁護するつもりは無いけれど)のイメージに引っ張られてるのか、どうなのか、良く分からないんだけど、松岡洋右の評価ってどうにもいまいちはっきりしません。
まあ三国軍事同盟を結んだということに関する評価は恐らく大概一致してるんでしょうが。

ただ、この十字架演説とかいうのをぐぐってみたんですが、それに対する諸外国の反応って言うのがページによって全然違うわけですよ。
上でリンクしたページによると、物凄い感動を諸代表に与えたって感じなんですが、別のページでは、

キリスト教に関する知識もろくにない日本国内では、この演説に喝采しましたが、言うまでもなく、諸外国、特にキリスト教国からは猛反発を受けたのです。
松岡洋右と小泉純一郎

ってなってて、「一体どっちやねん」的な(笑)。
まあ、でもこれは実際に議場で演説を聞いた諸代表には受けたけど、報道によってそれを知った諸外国の世論は反発した。っていうことかもしれねえですけど。諸外国は、国際連盟を脱退したことを非難するのが当然だから、公式見解として「すばらしい演説である」とか言うわけないしな。


まあ、今まで思ってたのとは別の見方を提供してくれたっていう意味でも、なかなか面白い本でしたよ。
国際謀略とか裏面史とか好きな人には良いんじゃあないでしょうか。
俺とかな!(笑)




                           BGM:「キングゲイナー・オーバー!」福山芳樹

*1:作者の池宮氏は戦中派だから美化されてるとは思うけど。でも元陸軍の割には、陸軍に対しては大分手厳しいんだよね。ただ単に当時から反発してたってだけかもしれないけど(笑)