論争の際に相手をアホ呼ばわりすることは、敗北への第一歩な件


正純の頭脳と人間についてなら、二郎三郎は熟知し、信頼もしている。さすがは弥八郎正信の子である。官吏としての才能は群を超えていたし、徳川家への忠節度も弥八郎ゆずりの強固さだった。難をいえば、頭が切れすぎるために、やや性急のきらいがある。そして愚者に弱い。自分には判りきったことを、根気良く人に納得させるだけの忍耐がない。極力抑えてはいるのだが、そうした時、つい感情が顔に出てしまう。その表情は、
<この馬鹿が……>
と口に出して云ったのと同じ効果を相手に与える。愚者はそうした軽蔑に異常に敏感である。即座にその表情を読みとって、気持ちを硬化させてしまう。一旦そうなったら最後である。どんなに明快に説明しようと愚者には判らない。いや、判らないふりをし続ける。そしてこの勝負は愚者の勝利に終るのが常であった。

隆慶一郎著「影武者徳川家康(中)」P154-155より

影武者徳川家康(中) (新潮文庫)

影武者徳川家康(中) (新潮文庫)



はてな見てると、普通にあるある過ぎて困る。
BGM:「風の眠る島」宮村優子住友優子仙台エリ