ここがヘンだよ猪瀬直樹。

はいどうも。皆さんこんにちは。いい加減「月一更新を維持する」云々っていう挨拶にも飽きてきた男、mimizuku004でございます。
もう少し更新したいなあとは思うんですが、なかなか。


ところで先日こんな記事がありました。
asahi.com(朝日新聞社):都庁の人に聞いてきた - 小原篤のアニマゲ丼 - 映画・音楽・芸能 asahi.com(朝日新聞社):都庁の人に聞いてきた - 小原篤のアニマゲ丼 - 映画・音楽・芸能
とはいうものの、今回の話はこの記事自体にはあんまり関係ありません。
この記事の末尾に、東京都が出してる青少年健全育成条例の改正点の説明をしたパンフレットのURLが載ってまして。
http://www.seisyounen-chian.metro.tokyo.jp/seisyounen/pdf/08_jyourei/jourei_kaiseiten.pdf(pdf注意。)
んで、その中に、こういう記述があったんですよね。

青少年の健全育成を目的とする販売制限は、最高裁判例においても、「表現の自由」を規定する憲法第21条第1項に違反するものではないと判示されています。

これって具体的にどれとは書いてないですけど、多分、平成元年九月十九日の岐阜県青少年保護育成条例事件(http://www.courts.go.jp/search/jhsp0030?hanreiid=50356&hanreiKbn=02)のことだと思うんですよ(判決全文はこちら。pdf注意)。
どういう判決かってえと、

本条例の定めるような有害図書が一般に思慮分別の未熟な青少年の性に関する価値観に悪い影響を及ぼし、性的な逸脱行為や残虐な行為を容認する風潮の助長につながるものであつて、青少年の健全な育成に有害であることは、既に社会共通の認識になつているといってよい。

そうすると、有害図書自動販売機への収納の禁止は、青少年に対する関係において、憲法二一条一項に違反しないことはもとより、成人に対する関係においても、有害図書の流通を幾分制約することにはなるものの、青少年の健全な育成を阻害する有害環境を浄化するための規制に伴う必要やむをえない制約であるから、憲法二一条一項に違反するものではない。

てな感じで、要するに「表現の自由制約すっけど青少年の健全な育成のためのやむを得ない制約だから違憲じゃないよ」と言ってるわけです。
まあ、この判決は判決で、

この判示は、「有害図書」と青少年非行化との因果関係をやや安易に認めた点に問題がある。少なくとも、「青少年非行などの害悪が生ずる相当の蓋然性のあること」(伊藤正巳裁判官補足意見)が具体的に明らかにされる必要があろう

芦部信喜著 高橋和之補訂 「憲法」第三版P181

などという批判もあるんですけど、それも今回の話とはあんま関係ありません。
なんでこれが気になるかってえと、数ヶ月前に東京都副知事であるところの猪瀬直樹氏が、

表現規制ではない。デマゴーグに踊らせられているだけ。だから書きたい作品を書きなさい、と言っているのです。村上隆のように、わたせせいぞうのように。less than a minute ago via web Favorite Retweet Reply

などとおっしゃっていたわけでございます。
でも、そうするとおかしいと思うんですよ。
だって東京都の見解が「そもそも表現規制じゃねぇし」だったら、なんで「表現の自由制約すっけど青少年の健全な育成のためのやむを得ない制約だから違憲じゃないよ」っていう最高裁の判断持ち出して来んのよって話で。


ここまで書いてふと思ったんですけど、ひょっとすると、「最高裁が言ってる制約って流通への制約であって表現への制約じゃないんじゃないの」と思われる方が居るかもわかりません。しかしながら、こういう表現の時とか場所とか方法に対する規制は「表現内容中立規制」などと申しまして、表現規制の一つの類型であると考えられています。
まあ、判決についてる伊藤正巳の補足意見の中では、きっぱり、

本件条例による有害図書の規制は、表現の自由、知る自由を制限するものである

と書いてあるわけですし、そもそも表現規制じゃないんだったら憲法二十一条に違反するとかしないとかいう判断をする必要もありません。
てなわけで、そこら辺の整合性がどうなってるのか全然理解できないんですよ。
どういうことなんでしょうね、これほんと。


あと、個人的には、パンフの

現在、書店においては、児童に対する性交など刑罰法規に触れる性交・性交類似行為や近親相姦等を、これを読んだ青少年がこうした性交などが社会的に許されているかのように誤解してしまうように描いたコミック本等が、青少年でも容易に買うことができる書棚で売られている状況があります。
これらの漫画等は、これまでの条例の基準である「性的感情を著しく刺激する」として区分陳列されている漫画等に比べ、刺激の程度は必ずしも高くはありません、したがって、これらの漫画等に対し、これまでの基準を無理に拡大解釈して適用することは行政の恣意的運用になりかねません。そこで、これらの漫画などを成人コーナーに区分できる新たな基準を、都民の代表である議会の議決が必要な条例で明確に設けることにしたのが、今回の条例改正です。

っていうところを見て、僕が以前書いた非実在青少年って、エロゲとかエロマンガとかエロ小説とかと本当に関係あるんですか? - 一切余計という記事は的を射ていたな、などと思ったりしました。

それでは、今日はこの辺で。