原則と例外



はい、どうも。みなさん、こんにちわ。
当初の予定通りというか、案の定というか、更新速度がガタ落ちしてますが、気にせずいきます。
今日は、原則と例外ということについて。
僕が大学で法学をやってたってな、前にも書いたと思いますけど、法学では、この「原則と例外」って考え方は、基本中の基本なんですよね。
なので、僕の思考回路にも、それが染み付いていて、このブログで記事書くときも、無意識的に、その考え方を背景にしてるというか、当然の前提にしてる部分があるかと思います。
まあ、「原則があれば例外がある」くらいのことは、法学にあまり縁がなかった人でも、一般常識として知ってるはずなんで、あんまり問題にはならないんですが。
……と、おいらはわりと思い込んでたわけですが、最近、
「ひょっとして、そうでもないんかも……」
とか思い始めてます。
まあ、これは別にウチのブログだけを見てて、そう思ったわけじゃなくて、いろいろなところを見ててなんとなーく、そんな感じがするような気がするんですけど。
特に、法的な問題に関する意見なんかを見てると、そう思うことが多いんですよね、やっぱり。(当たり前といえば当たり前なんだけど)
例えば、大分前の話になりましたけど、大阪の芋畑の話とか。
http://blogs.yahoo.co.jp/isikeriasobi/55431836.html
http://blogs.yahoo.co.jp/isikeriasobi/55448255.html
この中で、

(疑問)
つかこれ法律の穴じゃんか。「法の精神」とか曖昧なものに頼るからあんなタイミングで代執行できちゃうんだろ、なんとかならんのか。

(回答)
すべての法律には穴があります。穴をふさぐと、かえって不都合が生じる場合があります。たとえばデンパな執行停止→即工事ストップとなると、濫訴のおそれもあるでしょう。
裁判手続にのった以上は、当事者が「法の精神」を尊重すべきとするほかないのです。どうしても日程どおりにやりたければ、裁判所を説得して早く決定してもらうべきです。

っていうくだりがあんですけど、こことか、まさに、「原則と例外」っていう前提とか、その意味が分かってないって話なんじゃないかと思うんですよ。
そもそも、どうして、法学で「原則と例外」が前提になってるかってえと、法律っていうものが、相反する利益の衝突を調整するものだからってことなんですよね。大体。
この執行停止の話で言うなら、

私人の権利・利益の保護と行政の円滑な運営の確保というときによって相反する二つの理念をいかに調整

するかって話なわけです。
つまり、もそっと簡単に言えば、

行政の円滑な運営

というか、公益という面から見ると、取消訴訟が提起されたら、即座に、かつ絶対的に執行停止をするというわけにもいかないし、かといって、

私人の権利・利益

という面から見ると、絶対に執行停止をしてはならないというわけにもいかないんですよね。
(ここら辺は、いしけり先生の記事で分かりやすく説明してあるんで、そっち参照)
じゃあ、どうするかってえときに、出てくるのが「原則と例外」っていう考え方なわけですよ。
要するに、「原則と例外」という形で、ルールに、ある程度の「遊び」をつくって、相反する利益を双方とも考慮できるようにしようとするわけです。
この場合に当てはめれば、日本の行政事件訴訟法は、執行不停止の原則を採用しつつ、一定の要件の下で、例外的に執行停止を認めるという形で、それをしようとしてるわけですよ。*1
そこらへんのことを理解せずに、その「遊び」を見ると「穴」に見えてしまうのかもしれへんなあとは思うんですが。
せやけど、そんなこと言い出したら、法律なんて、その手の「穴」だらけやでっていう。
例えば、表現の自由の保障なんて、原則中の原則やけど、それでも、名誉毀損とかプライバシー侵害とかで例外的に制限されるやん。
確かに、その「遊び」は、常に「穴」になってしまう危険性を孕んでるのは孕んでるんやけど、だからといって、単純に塞いでしまえばええっていうもんでもないがな。そういう遊びがなかったらないで、大問題やで。
とか思うんですよ。
だから、それを「穴」とかいわれてもなあっていう。*2
まあ、でも、ここら辺の「原則と例外」の話が、法律の理解を難しくしてるのかもしれません。
つか、そう思ったから、今回、こんなことを、わざわざ書いてんですけど。


まー、あと、これまでしてきた話とは、全く関係ないんですけど、どうしても言いたいことがあるんで、書いときます。

「法の精神」とか曖昧なものに頼るから

ってさあ。
弁護士資格持った都道府県の知事に遵法精神期待しなくて、誰に期待しろっつうんだよ。


とまあ、ことほど左様に書いてきて、当初予定してた内容からは、遠くかけ離れたところに来てしまったわけですが(笑)。
最後に唐突に言いたかったことを書いとけば、僕が考察めいた記事を書く際は、こういう「原則と例外」的な考え方を背景として、
「原則、こうじゃねえ?」
みたいなことを書いているのであって、一切の例外を認めない趣旨じゃねーんですよ。むしろ、原則があれば例外があるのは、当たり前なわけで、そこに、例外を持って来て批判みたいなことをされても、その、なんだ、困るっていう。
なので、僕の記事を読むときは、そういうことを念頭に置いて欲しいなー、と、今日はそういうことを言うつもりだったんですが……。
ま、いっか。
これはこれで。

BGM:「燃えろ! 仮面ライダー水木一郎 こおろぎ'73

*1:まあ、俺も行政法はあんま詳しくないんですが。

*2:これが、執行不停止を原則とするよりも、ドイツがそうしてるように、執行停止を原則とすべきだ、みたいな話だったら、まだ理解できるんですが(http://www.nta.go.jp/ntc/kenkyu/ronsou/35/murakami/hajimeni.htmのpdf参照)。