堂場俊一「帰郷」(ネタバレ)
- 作者: 堂場瞬一
- 出版社/メーカー: 中央公論新社
- 発売日: 2006/02/01
- メディア: 文庫
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まあ、寝不足書店員続出とかなんとかいう帯に釣られて買ってみたわけですが。
正直、一作目と二作目はちょっと微妙かなーと思って、三作目を読んで、やっぱり微妙だったら、もう買うのやめようと思ってたんですけど、三作目、四作目から、なんだか急に面白くなりだして。
多分、これは、横山さんと今さんっていう、すごく立ったキャラクターが出てきたからなんじゃないかと思うんですけどね。
とりあえず、それはそれとして、五作目の「帰郷」ですよ。
超ネタバレになるんですけど、俺は、これを読んで、隆慶一郎の「死ぬことと見つけたり」の一節を思い出したっす。
「人間てもんは生れた時から罪は罪と知ってるんだよ」
甚右衛門が云った。
「三歳の餓鬼でも、自分のしたことがいいことか悪いことか、ちゃんと知ってるもんだ。そうして罪を犯せば罰されることも知ってる」
一息いれるように盃を口に運んだ。
「それが罰をうけねえとどうなるかね」
一同、考えこんだ。
「儲けた、と考えると思うか。とんでもねえ。奴は馬鹿にされたと信じるんだ」
「まさか」
求馬が思わず云った。
「それがそうなんだよ。侮辱された。はっきりそう思うんだ」
求馬は何かいいたそうにして、杢之助と萬右衛門を見た。仰天した。この二人はなんとしきりに頷きながら聴いているのだ。
「お前さん、どうやら悪だったことが一度もねえようだな、求さん」
甚右衛門は面白そうに求馬を見た。この言葉は正に求馬の弱みを衝いた。殿様を咎めて死を賜った父を持った息子に、悪になぞなる余裕は全くなかったのである。
「妙ないい方だが、悪には悪の誇りがある。その誇りは、罰を受けることで初めてはっきりするんだ。どんなに悪さをしても罰を受けねえんじゃ、誇りはずたずただよ。生きているのもいやになるだろうなァ」隆慶一郎「死ぬことと見つけたり」(上)P331-332より
- 作者: 隆慶一郎
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いや、パクリ云々とか言う話じゃないんですが。(参照:創作の境地 - 一切余計)
でも、こういう感じの話って、俺の知ってる限りでは、この二つくらいでしか見たことないんですよね。
結構珍しい考え方だと思う。
隆慶一郎と堂場俊一は、どこでこの発想を得たのか、わりと気になる。
まあ、ほんとに「帰郷」の元ネタが「死ぬことと見つけたり」だって可能性もありますけど、それはそれで、そう考えると面白いですよね。